音楽の実務を支える能力
合奏では自分の音を他の奏者に合わせ続ける必要があり、この調整は隔たりの判断そのものである。聞いた旋律を楽器で再現する場合も、音の名前を経由せず隔たりをたどる方が速い。伴奏を別の調で弾く移調も、和音を隔たりの組み合わせとして理解していれば対応できる。音楽理論が音度や和音記号といった相対的な記述を土台に組み立てられているのは、この能力が実務の中心にあることの反映である。絶対音感は補助として使えるが、音楽を成り立たせている土台ではない。
訓練による変化
相対音感は成人からの訓練でも改善するとされ、ここが絶対音感との大きな違いになる。2 音を聞き比べる課題を繰り返すと、どこに注意を向けるべきかが分かってきて判断は細かくなる。ただしこの改善を能力そのものの向上と読むのは慎重であるべきだ。認知的な訓練の効果が訓練した課題を超えて波及するかは長く議論が続いており、波及は限定的だという報告が多い。得点の上昇は、まず課題への習熟の証拠として受け取るのが妥当である。
測定に向いている理由
相対音感は測定の設計上も扱いやすい。2 音を同じ大きさ・同じ音色で鳴らし、高さだけを変えて比べさせれば、どちらが高いかという判断は再生機器の周波数特性や音量設定にほとんど左右されない。絶対的な感度を測ろうとすると結果が機器の性能で決まってしまうのに対し、相対的な判断ならその影響を避けられる。測定に使う音を日常の会話に近い高さの範囲に収めておけば、端末の内蔵スピーカーでも確実に鳴る。