周波数の差では表せない理由
音の高さは周波数で表せるが、周波数の差をそのまま隔たりとして扱うと聞こえ方と合わない。低い音域における 10 ヘルツの差はかなり大きく聞こえるのに対し、高い音域での同じ 10 ヘルツはほとんど区別できない。人の耳が手がかりにしているのは差ではなく比だからである。セントは比を対数で表した尺度なので、どの音域でも同じ値が同じ隔たりの感覚に対応する。音程を数値で扱う場面でセントが標準になっているのは、この一貫性のためである。
換算の考え方
1 オクターブは周波数が 2 倍になる隔たりで、これを 1200 セントと定める。半音はその 12 分の 1 なので 100 セントであり、半音を 100 回重ねると 1 オクターブに戻る。セントから周波数比を求めるには 2 の累乗を用い、逆に比からセントを求めるには対数を取る。この換算により、音域の違う 2 つの音程を同じ物差しで比較できるようになる。たとえば低音域の 20 セントと高音域の 20 セントは、周波数の差では大きく異なるが、隔たりとしては等価に扱える。
実際に使われる場面
楽器の調律では、基準からのずれをセントで表すのが一般的である。調律の方式によって各音の高さは僅かに異なり、その違いもセントで記述される。人がどれだけ細かい音程差に気づけるかという議論でもセントが使われるが、その値は条件によって動く。音を長く鳴らせば気づきやすくなり、短く切れば難しくなる。音色や音域、周囲の騒がしさも影響する。したがってセント数を一つ挙げるだけでは意味を持たず、どのような条件で測ったのかを併せて示す必要がある。