獲得に関する報告
絶対音感を持つ人の多くは幼少期に音楽に触れており、この関連は繰り返し確認されている。訓練によって成人でもある程度は音を言い当てられるようになるという報告はあるが、幼少期から持つ人が示す即答性には届きにくいと考えられている。関連要因として、話者の言語が声調言語であるかどうか、遺伝的な素因の関与なども検討されてきたが、それぞれがどの程度寄与するのかについて決着はついていない。獲得の仕組みが完全に解明された領域ではないため、断定的な説明には注意が必要である。
不便に働く場面
絶対音感は常に有利とは限らない。移調された楽譜を扱う場面では、書かれた音名と実際に鳴る音の高さがずれるため、名前が自動的に浮かぶことがかえって妨げになるという報告がある。移調楽器の奏者や、基準の音の高さが異なる古楽の演奏で、この種の違和感が語られることが多い。合奏で全体がわずかに沈んでいるとき、記憶している高さに固執すれば全体から外れてしまう。絶対音感は音に名前を貼る能力であって、その名前が状況に合っているかどうかは別の判断になる。
才能の指標としての限界
絶対音感を音楽的才能そのものと結びつける理解は根強いが、演奏を成り立たせている能力は多岐にわたる。隔たりを捉える耳、拍を保つ感覚、身体の細かな制御、楽曲の構造を把握する力、他の奏者に注意を配る力などが組み合わさって演奏になる。音楽を長く続けている人のうち絶対音感を持つ人の割合は、一般に想像されるほど高くないと報告されている。絶対音感の有無で音楽への適性を判定しようとする発想は、音楽という営みの幅と噛み合っていない。