弁別閾を動かす条件
弁別閾は固定された値ではない。音を長く鳴らせば違いに気づきやすくなり、短く切れば難しくなる。倍音を多く含む音色は手がかりが増えて有利に働くことがある一方、周囲が騒がしければ成績は落ちる。同じ人でも音域によって値は変わる。訓練を受けた音楽家は訓練経験のない人より小さな差に気づけると報告されているが、その差は生まれつきの固定量ではなく、聞き比べという課題への習熟を含んでいると考えられている。したがって条件を揃えずに数値を比べても意味を持たない。
聴力とは別の軸である
音程弁別と聴力は混同されやすいが、測っている軸が異なる。聴力が問うのは、どれだけ小さな音まで聞こえるかという感度であり、医療機関では防音室と校正された機器を用いて周波数ごとに調べる。音程弁別が問うのは、はっきり聞こえている 2 音の高さの違いに気づけるかという判断の細かさで、音の大きさは一定に保たれる。聴力に不安のない人が音程弁別に優れているとは限らず、逆もまた成り立つ。聞こえ方そのものに気になる点がある場合は、音程弁別の測定は判断の材料にならない。
測定の設計上の利点
音程弁別は、2 音の相対的な比較だけで成立するため測定に向いている。同じ大きさ・同じ音色の 2 音を鳴らして高さだけを変えれば、どちらが高いかという判断は再生機器の周波数特性や音量設定にほとんど左右されない。絶対的な感度を測ろうとすると、結果が耳ではなく機器の性能で決まってしまう。使う音を日常の会話に近い高さの範囲に収めておけば、端末の内蔵スピーカーでも確実に鳴り、聞こえなかった原因を耳と機器で切り分けられない事態を避けられる。